タバコの温度は高温なので、やけどの程度としては深いため傷跡が一生残ります。
タバコの温度は、喫煙者自身が吸い込んでいる時で850~900℃、灰皿等に置いた時で600℃程度と言われています。この温度で、人体に触れれば一瞬でやけどとなるのは当然ですが、さらに押しつけれるとなればとても深いヤケドになります。
「根性焼き」は、真皮あるいは皮下にまで達したかなり深いやけどのため、丸いキズアトが残ってしまいます。キズアトは、自然に元通りになることは期待できませんから、タバコを押しつけられた記憶とともに一生残ってしまいます。
このキズアトを治す方法は、手術で丸いキズアトを線状のキズアトに変える手術をするしかありません。タバコ跡(根性焼き)のできている状況や配列は様々なので、その方に合わせた技法と経験を駆使して手術を行います。
1、根性焼きが縦方向に2つ平行して並んでいる場合
2つの根性焼きの位置が微妙にずれているため、このずれを利用して中心部にZ形成術を考え、最終的な縫合腺は皮膚のシワに沿うようにデザインをしています。
2、根性焼きの位置が横方法に約1ヶ分ずれている場合
この場合も、2つのずれをZ形成術で調整しながら、先ほどよりも少し大きめのZ形成術で最終的な縫合線をシワのラインに合わすようにしました。
3、根性焼きの位置が縦方法にくっついて瓢箪状になっている場合
この場合も、2つのずれをZ形成術で角度調整しながら、切除して丁寧に縫合を行っています。
4.点在する場合にはシンプルに
単独で点在するようなタバコ痕については、ごくシンプルに切除して縫合を行います。丸い傷跡を線状に変えて目立たなくさせるという手法です。
5.単独で存在する場合もごくシンプルに切除
6.タバコ痕(根性焼き)がランダムに点在する場合
この場合には、デザインが更に複雑になり幾何学的なデザインを行い切除を行います。最終的には、何か所かで皮膚のシワに合致したラインが作られるように術前の慎重な計画を行います。今回は、3か所でシワのラインに合致するように行いました。
根性焼きは、個々の方によって個人差があり、状況が全く違うため1回で取り切れる場合や数回に分けて手術する場合があります。基本的には、球状の瘢痕を線状に変更し目立たなくするという手法なので、全くなかったようにするということではないことをご了承ください。
Z形成術の効果について
Z形成術は、形成外科的手術において陥凹した瘢痕や皮膚のシワに沿わない線状瘢痕の修正などに用いられます。皮膚切開のデザインがZの文字に似ていることからZ形成術と呼ばれています。2つの三角形の皮弁を入れ替える事によって、いろいろな効果が得られます。
○切開線の走行をを90度変更する。
○2点間の距離を延長する。
○線状瘢痕の拘縮を予防する。
○組織の位置を山から谷に変える。
形成外科の最も基本的な手技。
1.皮切のデザイン
皮膚の切開線は、必ず皮膚のシワのラインと一致するように考えることです。手術を行うときには、時間をかけて慎重にデザインを行います。形成外科医のデザインセンスも問われるところです。
2.真皮縫合と皮膚縫合
皮膚の中縫いは細い糸で縫合し、この糸は基本的に抜糸をしません。糸の緊張がきつすぎないように注意して、皮膚の表面がぴったりと合せます。皮膚表面の黒糸は、5日目には抜糸を行います。
3.ドッグイヤーの修正
創縁の両端には、大なり小なりドッグイヤーという皮膚の隆起が生じます。ドッグイヤーは、できる限り修正を行った方が良い仕上がりになります。
4.ハイドロコロイドゲルの貼付
私どものクリニックでは、この創面にハイドロコロイドゲルを貼付して、浸出液を逃がさないようにしています。
5.手術後のキズアトフォローアップ
スキントーンテープによる創の固定と内服(リザベン・柴苓湯)の処方6か月間を基本として、体質等によって赤みや盛り上がりが気になる場合にはケナコルト局所注射で対応を行います。